ジャズピアニスト

あるジャズピアニストのアルバムより視聴ができます。
このアルバムは世に出回っていないため、大変貴重なものとなっております。

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UN MOMENT

【DISCー1】

1曲目は、Spain(スペイン)

名曲中の名曲。まず美しさ、エグゾチシズム、パッション、そして小さな曲の中にひろがる大きな音楽的宇宙、無限の可能性を秘めた曲想にミュージシャンたちが魅了されたからに尽きよう。
敬愛するChick Coreaの先験的なこの曲に触発されて、自らも演奏を始めたという。
抑制された流麗さ、緩急自在、ピアノフォルテの可能性を追求した演奏。

2曲目は、Quiet Walt(Silent Walk)静かなる歩み

1991年3月に作曲したオリジナル。
時々ショパンの香りを感ずる時があるかと思えば、ピアノコンチェルトのコーダ部分の力強さをふっと想起させる。
説明できないなつかしさ、デジャヴ感に満ちた木立の間を森林浴しているうちに曲が終わる。

3曲目は、スタンダード Misty (ミスティー)

ピアニスト Errol Garner、1954年の名曲。
厚みのあるコードの出現の合間に展開される、おだやかながら思い切りよく飛び跳ね回るメロディーラインと立ち止まる静寂のコントラストが果てしなく美しい。

4曲目は、Song of the Backstage(舞台裏の唄)

2006年5月13日に作曲したオリジナル。
チャイコフスキーの名旋律 「白鳥の湖」の断片が一瞬間こえ、数度くり返される、ややアップテンポの曲。
コンサートの合間に舞台裏でひらめいた曲想のゆえにこの名が与えられたという。
素早く流れ去り、また華麗に上下するメロディーラインが印象深い曲。

5曲目は、Un Moment Du Repos(やすらかなひと時)

2001年10月29日に作曲したオリジナル。
フランス印象主義派風な曲。
美しい静寂の中にあってくつろぐ 瞬間の美の極致であろうか。
冒頭は水源からわく泉の水のゆらぎのような情景描写を想起する。
大きなライフサイクルの中にいる小さな生命の誕生と成長、休意と活動、活動と休息。
自然のバイオリズ ムのなかに生かされている生命。すべてを忘れ、現在(いま)という時の中にリラックスさせ、我を溶かし込み、再生を図ろうとするピアニストの魂を表すかのような楽曲である。
これがアルバムタイトルとして選ばれていることの意味を評者は深く感じる。

6曲目は、Things Ain’t What They Used To Be(昔は良かったね)

ブルースコード進行の名曲。
全体的に、よりスローでリリカルに料理され、ゆったりしながらも、時に饒舌でコミカルで刺激的な部分をはさみこんで、メリハリの効いたおいしそうなディッシュに仕上 げられている。

【DISCー2】

1曲目は、Feel Like Makin’ Love(恋の気分になって)

1975年の ポップスの名曲。
スローなイントロから一転して軽快なスィンギーなリズムとともにメロディーが演奏される。
だんだん饒舌になっていくブギウギ風味が増して盛り上がっていくが、最後いつもの洋一ワールドの冷静を取り戻す。
愛の小さなさざ波が、徐々に大きく盛り上がり、熱情の大波に成長して行くさまが目に浮かぶ、そしてその大波が再度、引き潮として小さくなって後退していく形も見える。
その愛の行方はどうなるのであろうかと、ふと気にかかる構成に仕上げられている。

2曲目は、I Hear You Singing

2004年2月19日に作曲したオリジナル。
<超>美しいスローでリリカルなピアノタッチを楽しむことができるナンバー。
アンダンテで演奏したのと同一線上のコンセプトでなされたオリジナル。

3曲目は、Take Five

イントロを聴いて、耳をそばだてる。
超絶技巧練習曲かと思ったら、なんとTake Five!
1959年にデイブ・ブルーベック・ カルテットがアルバム “Time Out” (プロデューサーはテオ・マセロ) の中で演奏し、その風変わりな 変拍子で一世を風靡した名曲。
このテイク・ファイヴの料理法を見たら(聴いたら) デイブもボールもおどろくかも、というパーフォーマンスである。
このコメントを読むより、まず聴いてその斬新さを確かめるにしかず。

4曲目は、Midnight Blues

2004年2月16日に作曲したオリジナル。
再度ブギウギ風の演奏。
間(ま)が独特の、弾(はじ) けるピアノ。重厚な和音の積み上げで、煌めきながら、一気に終章に向かう。
ここには真夜中の魂のざわめき、精神の高揚がある。
楽興の時とは、音楽家にとってこのような時間なのかもしれない。
至福の深夜はインスピレーションが研ぎすまされるタイムゾーン。

5曲目は、Morning Blend

2003年3月14日に作曲したオリジナル。
ジムノペディ風の超スローでクワイエットなナンバー。覚醒作用以上に催眠作用あり。
ゆっくり目覚めるのによく、また眠る前に聴けば同じようにここちよい眠りへ誘(いざな)う薬。
「聴く」 ハーブのような存在の曲。もちろん心に効くハーブでもある。

6曲目は、The Impulse

1998年8月16日に作曲したオリジナル。
軽快なベースラインに載せて紡がれる旋律は、軽やかながらもだんだん重厚な曲想へと広がる。
途中からそれまでのベースラインが消え、再度現れる時には、さらに加速されたベースライン上に、華麗で饒舌な旋律と重厚なコード進行が展開され、大団円に向かって突っ走る。
タイトルの示す通り、このアルバムの中ではもっとも「衝撃」的な熱い演奏が聴かれる部分である。
抑制の効いた多くのパーフォ マンスの中にあって、そこから逸脱したかのような、こんな熱さと激しさを、時に出するのだ。

7曲目は、Amazing Grace

知らぬ人はない賛美歌中の賛美歌『アメージング・グレース』はジョン・ニュートンが船の船長として航海していた1748年に、激しい嵐に遭いながら奇跡的生還を遂げたことに啓示を得て書かれた。
祈りと感謝に満ちた歌詞の冒頭は以下のようである。
“Amazing grace! how sweet the sound / That saved a wretch like me! / I once was lost, but now am found, / Was blind, but now I see.”
ここでは無論演奏のみだが、これ以上のシンプルさはないと思われるシンプルさでピアノに向かって捧げた祈りを象徴する情景が浮かび、感動的である。歌詞の内容を踏まえた敬虔な演奏になっている。

8曲目は、A Whiter Shade Of Pale(青い影)

1967年英国のロックバンド「プロコルハルム (Procol Harum)」 の演奏で一躍有名 になった曲である。
終わりに近い部分に出てくる歌詞 “If music be the food of love / Then laughter is its queen / And likewise if behind is in front / Then dirt in truth is clean” はシュールでサイケデリックに響くイディオムを用いながら人生における音楽の意味について シンプルな考察をしている。
このパーフォーマンスは原曲の重層低音の重苦しさとスローテンボから脱し、軽快なリズムとミディアムテンボを基調としたものにクラシカルな味付けがほどこされ、華麗にして繊細なる、 新たな解釈の洋一ワールドが展開されている。

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